全日空でエンジン整備に従事されているお客様のご厚意にて、職場であるエンジンメンテナンス工場見学の機会を戴くことになりました。(機体整備の見学は、全日空のホームページにて募集を公開されているのですが、エンジンの方は誰でもいつでも見ることのできるものではありません!)
せっかくの機会ですから、ご興味があるお客様がおられないかと、声をお掛けしたところ、40名弱の方にお集まりいただけることになりました。
●集合場所にて
全日空が50機発注した次世代機ボーイング787に載せられるロールスロイス・トレント1000の1/4模型にお出迎えを受けます。
初めに座学でジェットエンジンの概略の講義を受けます。(三國講師による)
ここから工場に入ります。40名弱が4つの班に分かれての見学です。
ボーイング777-200/300 に搭載される プラットアンドホイットニー4000エンジン。ファン(正面の羽根)の直径は112インチでボーイング737の胴体の直径とほぼ同じ大きさ。
エンジンを積載・移動する台車は現在ではエンジン製造メーカーが準備しているとのことですが、以前は日本で造っていたそうです。昭和62年、堀口内燃機製。
●ジェットエンジンの細部
ハシゴのように見えるのが、ジェットエンジンの燃焼室の冷却に使用されるエアを噴射するパイプ群。
真ん中のデベソがプラグホール。反対側にもう一つで一つのジェットエンジンにおいて2本のプラグが使われています。
これがプラグ本体。昔のプラグは先端に放射性物質が使われていて、このように素手で持つことはできなかったそうです。
タービンブレードは2000度以上にもなるそうで、耐熱性の高いコバルト系の合金で造られセラミックコーティングされているのですが、それでも熱にやられ画像のように侵されていきます。1枚100万円。
ファンブレードは一枚800万円相当だそうです。(プラットアンドホイットニー4000の場合)
下2つは、エンジンを制御するECUです。エンジンに直接固定されているのですが、空気取り入れ口の近くのカウル内にあるので、熱的には問題ないそうです。
ジェネレーター(交流発電機)です。これ一つで(といっても結構な大きさ)コクピットからキャビンまですべての電力を供給するそうです。発電規格は、115/200V 三相 400 HZ で、115V AC を 28V DC に変換して機内および機体システムの電源として使用しています。
ジェットエンジンを機体に固定するマウントです。これを介して2か所で固定されます。材質はチタン合金の鍛造のように見えたのですが・・・
●航空機の整備ツール
ハンドツールは市販品と変わらないスナップオンが大半でした。世界市場に向けた航空機といえども米国の工業製品お得意のインチ規格です。工具の紛失(行方不明)は、エンジン内への残留の可能性が考えられるゆえ絶対に許されないそうで、一瞥でそれが分かるような保管方法を採られています。
●航空機におけるセイフティ・ワイヤリング
ワイヤーのツイストは、個所にもよるのでしょうが、画像の場合、ツイスターのオートツイスト機構を使わず、手で回しで縒っておられましたね。
この辺までは普通のワイアリングですが、下のワイヤーはちょっと特殊な形状をしています。
このワイヤーはあらかじめ、ツイスト済みで、さらに片側の先に抜け留めがカシメてあります。そのワイヤーをネジなどに開けてある穴に通し、もう片方の先端をカシメ処理して固定するのですが、それを行う工具が下のものです。
●工場屋上から見える羽田空港
●参加者全員で記念撮影(2400×1800)
皆様、お疲れさまでした。そして当日、工場を案内していただきました4名の全日空の社員の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。